熱をよく出していたミキも3歳になったころ、
「父」という言葉を、なんとなく知りはじめた頃だった。
母が誰かに電話しているようだった。
「沖縄からお電話しています、平良と申します。」
「どなた様ですか」
母は震える受話器を握りしめ、言葉を探した。
「平良と言いますが、うちの人そちらにいますか」
「、、、あの、、、こちらの電話番号はどうしてお知りに?」
「荷物の中にメモ書きが紛れ込んでいて、もしやと思いダイヤルを回しました。
主人が帰ってこない日が続きまして、、、、
沖縄に帰ってきました。
三人目を身籠ったので、、、
臨月近くまで、、
仕方なく、、、」
「、、、ご、けっ こん されているのですか?」
「子供は三人います。
三人目は大阪で。」
「、、、、あ、あの す少しお時間ください。
奥様の元にお帰りになるようにしますので」
受話器を置いた音が響いた。
ミキが黙っているのに気づいたリンダが
「どうしたの?」
「母さん、お父さんのことで機嫌悪い、、、」
「ミキお父さんがいたこと知ってるの?」
「うん、電話で誰かと話してるの聞いた」
「お父さんどこにいるの?」
「知らない、、、女の人といるみたい」
「わたしはお父さんなんていつもいなかったから
いなくていい」
「ミキはお父さんと暮らしたい?」
「わからない、、、」
“お父さん”という言葉だけが、部屋の中に残った。

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